医療・ライフサイエンス

医療におけるカメラの活用

優れた精度・性能

新たな技術の登場により、さらなる高度化が進む医療業界。特に産業用デジタルカメラは、生体情報を可視化することで、診療の向上や患者のモニタリングに大きく貢献しています。

ホワイトペーパー

医療に貢献しているマシンビジョンカメラ

このホワイトペーパーでは、医療とマシンビジョンカメラの関係性について、以下のトピックを中心に解説します。

  • 医療用途におけるマシンビジョンカメラの役割

  • 医療用途向けカメラの選定要件

  • 医療用途向けカメラにおける色忠実性の重要性

産業用カメラによる医療革新

医療にカメラが導入される前は、病気を正確に診断することが困難でした。例えば、1800年代頃は、開腹手術をはじめとする侵襲的方法で診断が行われていました。それが今では撮影技術や画像処理技術の発達により、カメラを搭載した医療機器が広く普及し、よりスムーズな診断が可能になっています。

カメラを搭載した医療機器の例

  1. 眼科の網膜検査に使用される眼底カメラ

  2. 体液検査(血液検査、尿検査など)に使用される自動顕微鏡

  3. 内臓検査や体腔内検査に使用される内視鏡

  4. 歯科の口腔内デジタル撮影に使用される口腔内スキャナー

  5. 皮膚科の診断や病変が疑われる部位の経過観察に使用されるデジタルダーモスコープ

上記の機器は、診断や治療に向けた情報収集が可能であることから、医療・ライフサイエンス分野のさまざまな用途に役立てられています。

医療にカメラを活用するメリット

医療にカメラを活用するメリットは、大きく分けて以下の4つがあります。

医療における記録

記録

デジタル画像があれば、診断のために逐一観察を行う手間が省けます。また、画像データをラベル付けすることで、病変が疑われる部位の再確認や経過観察をいつでも簡単に行えます。さらに、画像や関連する情報をまとめた診療記録は、デジタル形式のデータとして世界各地の医療関係者と共有することも可能です。

医療における画像解析
Wang et al.: Deep Learning for Identifying Metastatic Breast Cancer, 2016

画像解析

一般的ながん検査では、患者から採取した組織を顕微鏡で観察します。最近は、自動顕微鏡による検体画像の撮影や、ニューラルネットワークなどの最新アルゴリズムによる画像解析と病理診断支援が行われるようになり、人間の手で数時間かかっていた作業がわずか数分にまで短縮されています。

医療における自動化

自動化

医療の世界では、高齢化に伴う多重疾病の診断に対するニーズの増加人件費の高騰により、さらなる自動化の推進が求められています。例えば、臨床検査機関で血液検体を取り扱う際も、人間が個別に保管するのではなく、バーコードシステムによる一元管理が行われています。

医療における可視化

可視化

超小型カメラで人間の体内を撮影する内視鏡検査、正常な組織とがん組織をリアルタイムに識別する蛍光ガイド手術、眼の血管構造を描出する蛍光眼底造影検査、ハイパースペクトルカメラによる組織の血流動態評価をはじめ、高度な医用イメージングにおいても、カメラは機械の目として大きな威力を発揮しています。

医療用途向けカメラの性能要件

診断や治療に直接影響することから、医療用途向けカメラは、以下のような厳しい性能要件を満たさなければなりません。

  1. 信頼性&耐久性:一貫した画質を実現するため、ISO規格に準拠した製造体制の下、優れた信頼性と耐久性を確保すること

  2. 色忠実性:正確な色に基づいて診断が行われるようにするため、デジタル画像の生成とモニター表示の両方において、現実世界と同じ色合いを忠実に再現すること

  3. 長期運用性:時間がかかる医療機器認証に対応するため、カメラの長期運用を保証すること

  4. 機能性:生画像データの生成に加え、用途に応じて色補間、色補正、シャープネス調整などの機能も完備していること

医療におけるカメラの用途

デジタル画像処理は、疾患の研究・分析・診断に新たな可能性をもたらしています。

眼科で使用される眼底カメラ

眼科診療

画像処理技術は、眼科において重要な役割を果たしています。網膜検査に使用される光干渉断層計(OCT)や眼底カメラをはじめ、さまざまな機器が導入されたことで、診療の質が大きく改善しただけでなく、眼疾患の遠隔診療も可能になりました。Baslerでは、色忠実性・再現性・感度・画質が重視される眼科の各種診療用途向けに、高速・高解像度撮影が可能なカメラをご提供しています。

自己免疫疾患や感染症の診断に使用されているコンピュータ支援型免疫蛍光顕微鏡システム「EUROPattern」(ドイツ・EUROIMMUN Medizinische Labordiagnostika社製、蛍光イメージング用CMOSカメラとしてBasler aceを搭載)
自己免疫疾患や感染症の診断に使用されているコンピュータ支援型免疫蛍光顕微鏡システム「EUROPattern」(ドイツ・EUROIMMUN Medizinische Labordiagnostika社製、蛍光イメージング用CMOSカメラとしてBasler aceを搭載)

臨床検査&ラボラトリーオートメーション

検査工程の自動化、高度な品質管理、バイオイメージングを可能にする産業用カメラは、今や臨床検査に欠かせない存在です。Baslerでは、優れた速度・画質・信頼性を兼ね備え、検体分析の再現性・効率性の向上に貢献するラボラトリーオートメーション向けカメラを豊富に取り揃えています。

蛍光顕微鏡に使用される高度なカメラ

顕微鏡観察

医学研究、生物学研究、材料科学研究から医薬品検査、病理検査に至るまで、幅広い画像の取得・処理に顕微鏡が使用されています。微細な構造物を正確に分析するには、画質・速度・色忠実性のほか、広いダイナミックレンジも必要です。これらの条件をすべて満たすBaslerカメラは、従来の光学顕微鏡だけでなく、専門的な蛍光顕微鏡にもお使いいただけます。

歯科で使用されるカメラ

歯科診療

コンパクトでありながら、抜群の速度・画質・感度を実現するBaslerカメラは、最先端の画像処理技術が求められる歯科診療に最適です。

皮膚の形状・色調を忠実に可視化するダーモスコープ

皮膚科診療

皮膚検査の一種であるダーモスコピーでは、ダーモスコープと呼ばれる専用カメラで病変が疑われる部位を撮影した後、ソフトウェアによる画像解析を行います。照明、角度など撮影条件の変化にかかわらず、一貫した画質と優れた色忠実性を実現するBaslerカメラは、長期的な経過観察や医師の診断支援に幅広く活用できます。

手術部位の高精細映像を撮影する術野カメラ

外科手術

天井懸架アーム式の術野カメラや低侵襲手術向けの内視鏡カメラをはじめ、手術室にはさまざまなカメラが設置されており、異なる角度から手術部位のリアルタイムな映像を撮影することができます。Baslerカメラは、高解像度で不具合が少ないため、実際の外科手術はもちろん、研修や臨床試験にも最適です。

医療におけるカメラの活用

個人情報保護&安全確保

診療の過程で撮影された画像と映像には、患者の個人情報が含まれています。そのため、カメラで撮影を行う際には、関連する法令に従って閲覧制限、データの暗号化、パスワード設定を行うなど、患者のプライバシーを適切に保護しなければなりません。また、患者の安全を確保するため、定期的にカメラの保守点検を実施し、正常に動作するか確認することも大切です。このほか、個人情報の取り扱いと保管に際しては、事前に患者の同意を得る必要もあります。

医用イメージングの今後の展望

カメラが低価格化・小型化するなか、医療機関の種類を問わず、医用イメージングの導入や医療機器の高度化がさらに進むと予想されます。このことから、最先端のイメージセンサーを搭載し、優れた画質を実現する産業用カメラは、今後も幅広い医療用途で活用されるでしょう。

医療用途向け製品

特別設計のBasler MED aceをはじめ、豊富な製品ラインナップとノウハウを活かし、画像処理に関する個別のご相談に対応いたします。

製品・サービスに関するご不明点やご相談等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。