カメラのサイズ:小さいほどいい
無性に甘い物が食べたくなったことはありますか?「小さいほどいい」のはスウィーツだけではありません。産業用マシンビジョンの世界でも同様のことがいえます。近年、業界内で「シュガーキューブ」(角砂糖)という言葉が注目されるようになっており、ビジョン技術の小型化が加速しています。
シュガーキューブ型産業用マシンビジョン
「シュガーキューブ」とは29mm×29mmのサイズの小型カメラを指す言葉で、公式な呼び方ではありませんが業界内に浸透しています。「シュガーキューブ」のデザインは、エントリーレベルやニッチな分野の産業用カメラに採用されており、医薬、交通・輸送、リテールといった多くの業界におけるさまざまな代表的な用途のほか、ファクトリーオートメーションにおける品質保証や自動光学検査にも使用されています。
コンパクトなボディに秘められた大きな革新性
FireWireやその後のGigEの台頭に伴い、20年前のアナログカメラの時代にはすでに小型化のトレンドが見られました。USB 3.0を始めとする最新インターフェースが登場した現代においても、この動向は続いていくと見られます。高解像度センサーやさまざまな機能を網羅したファームウェアなど、技術革新により生まれた注目製品のすべてがこのようなコンパクトなデザインの中に組み込まれています。また、現在のアナログカメラは、画像データを外部の処理ユニットに送るのではなく、コンパクトなボディを持つカメラの中で処理できるようになっています。
重要ポイント
マシンビジョンシステムの新規構築や既存システムの再構築を計画する場合は、最初から小型化を想定し、後になってスペースの問題が起きないように注意しなければなりません。
特に再構築の場合は、コンパクトなサイズを維持する必要があり、大型化を進めると重大な機械的問題に直面する可能性があります。
小型センサーには小型カメラが最適
カメラの大きさは、そのカメラに搭載するセンサーサイズに少なからず影響します。CCDセンサーなどの大型センサーは小型カメラに対してうまく動作しませんが、マシンビジョンの世界ではCMOSセンサーへの移行が進んでいることから、このような問題が発生するケースは少なくなりつつあります。ピクセルサイズの小さい高性能の小型センサーはますます売れ行きが良くなっており、現在の標準サイズである29mm×44mmに取って代わると予想されます。
低価格で高い生産性と柔軟性を実現
一般的なマウント穴と広く普及している29mm×29mmというコンパクトなサイズを採用することで、カメラ開発の手間を省いてコストを最小限に抑えながら、最高レベルの処理速度を実現することが可能です。ほとんどのカメラメーカーでは小型カメラの開発に取り組んでおり、顧客に対して非常に高い柔軟性を提供することにつながっています。
従来のCCDセンサーは、多くの場合で40~45mm×40~45mmなどの大型カメラと組み合わせて使用されていました。より小さなCMOSセンサーに移行する動きがあることから、マシンビジョン市場では大型カメラに対するニーズが減少し、ニッチな分野でしか使用されなくなるでしょう。
そして、コンパクトで高い解像度を誇る最新世代のCMOSセンサーの普及に支えられ、29mm×29mmの超小型カメラや約35mm×35mmのカメラが従来の大型カメラに取って代わると見られます。
カメラを小型化すること得られるメリット
システム内に小型カメラを組み込むことで、軽量化と作業速度が向上します。例えば、ロボットアームを軽量化することで、高速かつ柔軟な動作が可能になります。
カメラの小型は省スペースにつながります。システムが小型化するだけでなく、カメラへの物理的アクセスも容易になります。
小型カメラには、元々コストが安い小型センサーと組み合わせることができるというメリットがあります。センサー面が広いセンサーは必要となるシリコンの量も多くなるため、小型センサーに比べるとコストが大幅に上昇します
コンパクトな小型センサー(特に最新のCMOSセンサー)の登場により、産業用マシンビジョンにおいて大きな技術革新が進んでいます。
主にCCDセンサーを搭載している大型カメラは、特に複雑な分野において引き続き採用されていますが、今後は小型センサーや小型カメラがマシンビジョンの主流となると見られます。