産業用画像処理に最適なCoaXPress 2.0
ブラウン管テレビの時代から2000年代にかけて構想と改良が行われた後、2011年に高速インタフェース規格として正式に発表され、当時の業界に衝撃を与えたCoaXPress(CXP)。以下では、その最新版としてデータ転送速度がさらに向上したCoaXPress 2.0について解説します。
高度な産業用画像処理に最適なCoaXPress 2.0
このホワイトペーパーでは、高速インターフェース規格のCoaXPress 2.0について、以下のトピックを中心に解説します。
CoaXPress 1.0/1.1とCoaXPress 2.0の違い
CoaXPress 2.0を利用した画像処理システムの構築例
CoaXPressの導入に最適な時期
CoaXPress 2.0の概要と改善点
複数のケーブルが必要だったCoaXPressと異なり、CoaXPress 2.0はケーブル1本で電源供給とデータ転送が可能であるほか、業界最速レベルの1チャンネル当たり最大12.5Gbpsの高速転送を実現しています。
GigEやUSB 3.0と異なり、CoaXPress 2.0は一般的なコンピューターに搭載されていません。CoaXPress 2.0を介してカメラからホストへ画像データを転送するには、画像入力ボード(インターフェースカード、フレームグラバーなど)を別途準備する必要があります。ただし、CPU負荷を大幅に軽減することで、ほかの作業にリソースを割り当てられるため、これは必ずしもデメリットではありません。
CoaXPress 2.0のメリット
画像入力ボードの追加コストがかかるとはいえ、CoaXPress 2.0にはこれを上回るメリットが多くあります。
ケーブル長:40~100mの長距離転送に対応(GigE、USB 3.0は最大10m)
コスト:ケーブル1本で電源供給とデータ転送が可能&市販のケーブルも豊富でメガバイト単価が低い
同期性:複数のカメラを簡単に運用できるため、生産ラインなどの動体撮影に最適
速度:最大12.5Gbitsの高速転送&画像入力ボードがCPU負荷を軽減
互換性:GenICam対応でカメラやソフトウェアとの接続が簡単
セットアップ性:少ないケーブルでシンプルなシステム構成を実現
CoaXPress 2.0の用途
ほかの規格と比較した場合、CoaXPress 2.0は転送速度だけでなく、転送距離も突出しており、カメラとコンピューターの距離が離れていても使用できます。そのため、半導体検査、3D AOI(自動光学検査)、印刷検査、食品検査、高度道路交通システム(ITS)をはじめ、高速・高解像度撮影と長距離転送の両方が求められる用途において、CoaXPress 2.0は広く普及しています。
CoaXPress 2.0とGigE、USB 3.0の違い
CoaXPress 2.0とUSB 3.0、GigEを比較すると、実に多くの違いがあります。
派生規格であるUSB3 Visionが産業用画像処理向けインターフェースとして高い信頼を得ているUSB 3.0は、民生用途にも広く普及しており、多くのノートパソコン、デスクトップパソコン、さらにはタブレットやスマートフォンにも搭載されています。
一方、GigEは2006年から産業用画像処理業界において存在感を示し始めた規格で、現在は産業用デジタルカメラに最も多く採用されています。
多くのコンピューターに標準搭載されているUSB 3.0とGigEには、別途ハードウェアを取り付ける必要がないというメリットがあります。一方、CoaXPress 2.0の場合は、画像入力ボードを追加しなければなりませんが、その代わりCPUに負荷をかけることなく、大量の画像データを高速で転送できます。
CoaXPress 2.0への移行
CoaXPressとCoaXPress 2.0の間には互換性があるため、一部の機器を交換するだけでも、CoaXPressからCoaXPress 2.0への移行は可能です。ただし、長期的な観点から見ると、システム全体を刷新して最新技術を導入したほうがメリットは大きいといえます。
一方、ほかのインタフェースからCoaXPress 2.0へ移行する場合は、以下の点を確認するとよいでしょう。
既存のカメラ/コンピューターが交換後のケーブルや高速・高解像度撮影に対応しているか
PoC(Power Over Coax)による電源供給が可能か
ソフトウェア/ドライバーの更新が必要か
インターフェースカードとフレームグラバーの違い
フレームグラバー
フレームグラバーは、コンピューター上でアナログビデオ信号をデジタル変換する必要があった時代に生まれた用語です。しかし、今ではカメラセンサーで生成されたデジタル形式の画像データがそのままコンピューターに転送されることから、デジタルインターフェース(GigE、USB 3.0、Camera Link、CoaXPress)を介して取り込んだ画像データを一時保存するためにフレームグラバーが使用されるようになりました。フレームグラバーでは、コンピューターのプロセッサーを介することなく、データをメインメモリーに直接書き込むDirect Memory Access(DMA)という転送方法が採用されています。さらに、専用の画像処理ソフトウェア(HALCONなど)や汎用インターフェース規格(GenICamなど)を介してデータにアクセスできるものや、ビニング、スケーリングなどのデータ処理が可能なものも存在するため、比較的多くの労力とコストがかかるとはいえ、画像データを前処理する必要がある場合は、フレームグラバーを選択するとよいでしょう。
インターフェースカード
フレームグラバーよりもシンプルな構造をしているインターフェースカードは、カメラから受け取った画像データを前処理なしで直接メモリーに書き込みます。また、ここでもDMAが採用されているため、CPUに余計な負荷がかかりません。フレームグラバーのような前処理機能はありませんが、導入にかかるコストや労力が少ないのがインターフェースカードの大きな特長です。
インターフェースカードとフレームグラバーの比較
機能 | インターフェースカード | フレームグラバー |
---|---|---|
画像データの前処理(スケーリングなど) | × | 〇 |
DMAによるCPU負荷の軽減 | 〇 | 〇 |
汎用ドライバー/汎用インターフェース規格(GenICamなど)への対応 | 〇 | △ |
画像処理ソフトウェア(HALCON)の使用 | 〇 | △ |
導入労力 | 〇 | △ |
導入コスト | 〇 | △ |
まとめ:CoaXPress 2.0の特長
産業用画像処理において、大量データの高速・長距離転送を可能にするCoaXPress 2.0は、Camera Linkに取って代わるインターフェースとして、コンピュータービジョン業界の注目を集めています。画像入力ボードを別途準備する必要はありますが、CPUの代わりにデータ転送や前処理を行うことで、すべてのリソースを画像処理に割り当てられることを考慮すると、多くの用途でデメリットよりメリットのほうが大きいといえるでしょう。
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