ビジョンシステムの基礎知識
カメラ、レンズ、照明、コンピューター、ソフトウェアの選定、画質評価、各構成機器のセットアップを含め、要件に合ったビジョンシステムを構築するにはさまざまな作業が必要になります。
ビジョンシステムの基本仕様
例えば、リンゴの外観検査装置を開発する場合、スムーズな出荷と一貫した品質を確保するには、不良のあるリンゴを高速で識別しなければなりません。ビジョンシステムを構築する際には、このような具体的な作業内容を把握したうえで、以下の基本仕様を決定する必要があります。
システム要件と撮影条件
カメラの画素数
色情報の必要性(カラー/モノクロ)
カメラの性能と画質
レンズの性能と倍率
照明
コンピューター
ソフトウェア
システム要件と撮影条件
システム要件と撮影条件は、ビジョンシステムの構築において見過ごされがちな要素です。しかし、これらを事前に明確にしておけば、結果として時間やコストの削減につながります。
主な確認事項は、以下の通りです。
撮影範囲、拡大倍率、非可視光帯域の撮影に対応した特殊な照明の必要性
寸法・形状測定の必要性
正確な位置特定の必要性(ピックアンドプレースなど)
特徴別の分類の必要性
カメラの画素数
カメラの画素数は、ビジョンシステムの解像度を左右する重要な要素です。
従来のアナログカメラでは、画像内の判別可能な2つの点または線の間の距離から解像度を評価していました。
これに対し、デジタルカメラでは「画素数2MP」という言い方をよくしますが、これはあくまでセンサー面に配置された画素の総数を数値化したものであり、カメラ、レンズ、撮影条件(撮影範囲、視野角など)によって実際の解像度は変わります。ただし、画素数と解像度には相関関係があり、画素数が多いほど解像度は高くなります。つまり、画素数とは、最適な撮影条件下における最大解像度を示したものといえるでしょう。
一般的に対象物の色を忠実に再現するには、カラーカメラと白色照明が必要になります。しかし、色特性を検知しなければならない場合(赤いりんごについたキズのなど)でも、カラーカメラが必須になるというわけではありません。実際にサンプルを使用してテスト撮影を行えばわかりますが、多くの場合、カラー照明とモノクロカメラだけでも、色の違いは十分に判別できます。これに加え、カラーカメラはモノクロカメラより感度が低いため、色情報が重要でない場合はモノクロカメラを使用するとよいでしょう。
このほか、高度な検査用途(種類の異なる特徴の検出など)においては、照明とレンズを使い分けながら、複数のカメラを運用する場合もあります。
カメラ機能と画質
カメラの画質を評価する場合は、画素数のほかに以下の項目を考慮するとよいでしょう。
光感度
ダイナミックレンジ
一方、カメラの性能を評価する場合は、1秒間当たりに撮影可能な最大フレーム数を示したフレームレート(fps)が最も重要になります。
レンズの性能と倍率
性能が良いレンズほど、価格も高くなりますが、通常の撮影用途であれば、標準的なレンズで十分に対応できます。レンズの選定における主な確認項目は、以下の通りです。
レンズマウントの種類
ピクセルサイズ
センサーサイズ
倍率(画像と対象物の大きさとの比率)
焦点距離(カメラと対象物の間の距離や最終的な倍率に影響)
光感度
以上の項目さえ確認しておけば、メーカーの仕様書に基づき、安価な標準レンズで十分なのか、それとも高価なハイエンドレンズが必要なのかを簡単に検討できます。
また、結像性能を示したMTF曲線や歪曲収差、色収差、対応波長範囲もレンズ選定の参考材料として役立ちます。
ビジョンシステム向けのレンズの中には、近赤外対応レンズ、広角レンズ(魚眼レンズ)、高精度測定が可能なテレセントリックレンズなどの特殊なレンズも存在しますが、これらはいずれも価格が高くなります。
なお、レンズの選定においても、実際のサンプルを使用したテスト撮影が最も効果的です。
照明
暗い場所で物が見えづらくなることは、人間の肉眼に限ったことではなく、ビジョンシステムにおいても同様です。
画像の明るさ調整
高速撮影や低照度イメージングでは、高感度カメラと高性能レンズを採用するのが一般的です。しかし、実は照明の変更や環境光の調整、特殊なレンズやフラッシュの使用などにより、適切な光源を作り出すだけでも、画像の明るさを向上させることはできます。ただし、撮影において重要となるのは明るさだけではありません。レンズからカメラまでの光路も画質を大きく左右します。
環境光を補うためにフラッシュを点灯する場合、撮影範囲に光沢物があると、光が反射して画像が白つぶれしてしまいます。しかし、産業用画像処理では、平らで反射性の低い対象物のコントラストを向上させるために、あえてこのような反射現象を利用することもあります。なお、光を乱反射する対象物を撮影する場合は、拡散照明を採用します。
画像処理用の PC ハードウェアおよびソフトウェアの要件
コンピューター
ビジョンシステムにどのようなコンピューターが必要になるかは、実際の用途や処理速度によって異なります。簡単な撮影であれば、標準的なコンピューターで十分ですが、高速かつ複雑な画像処理を行う場合は、特殊なコンピューターが必要になります。
ソフトウェア
カメラで撮影した画像にアクセスするには、ソフトウェアが必要です。ほとんどのカメラには、画像ビューワーやカメラ設定などの標準機能を完備したソフトウェアが付属しています。しかし、特殊な撮影や画像処理を行う場合は、専用のソフトウェアを購入するか、カスタムメイドで開発しなければなりません。
まとめ
ビジョンシステムを構築するには、カメラ、レンズ、照明からコンピューター、ソフトウェアに至るまで、すべての構成機器の要件を把握したうえで、適切に組み合わせることが求められます。
しかし、事前に時間をかけて撮影工程や周辺環境の障害となる要素を特定し、段階ごとに開発を進めれば、これは決して難しいことではありません。Baslerでは、ビジョンシステムの構築について解説したホワイトペーパーも公開しています。ぜひご覧ください。
オンラインツール
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