GigE Vision 3.0
バージョンアップにより、さらなる高速化・低遅延化を実現
先端自動化協会(A3:Association for Advancing Automation)とその傘下のGigE Vision専門委員会(GigE Vision Technical Committee)では、マシンビジョン向けインターフェース規格GigE Vision 3.0の策定を進めています。同協会にはBaslerも加盟しており、最先端のイーサネット機器とRoCEv2プロトコルを活用することで、産業用画像処理と産業用オートメーションのさらなる高速化・低遅延化が期待されています。


GigE Visionの高い技術的柔軟性
GigE Visionは、イーサネットを介して産業用デジタルカメラとその他構成機器、アプリケーションとの間で画像データをやり取りするためのインターフェース規格として、帯域幅、ケーブル長、複数のカメラの運用において高い技術的柔軟性を備えています。
そのうち、GigE Vision 2.0では、カメラ側からホスト側への画像データのパケット転送にGVSP(GigE Visionストリーミングプロトコル)、構成機器の同期にIEEE 1588準拠のPTP(Precision Time Protocol)を使用しています。
GigE Vision 3.0 - 速度・精度・信頼性がさらに向上
RoCEv2によるレイテンシーの最小化
GigE Vision 3.0の一つ目のイノベーションは、最新のRoCEv2(RDMA over Converged Ethernet Version 2)を活用したデータストリーミングにあります。GigE Vision 3.0はGigE Vision 2.2の後継規格であるため、ストリーミングプロトコルのRoCEv2についても、既存のGVSPを補完するように設計されています。RoCEv2によりデータ通信の高速化・低遅延化を実現すれば、これまでの機能性はそのままに、システム全体の性能が大幅に向上します。
イーサネット機器の性能の最大化
RoCEv2対応のNIC(ネットワークインターフェースカード)を使用することで、最大400Gbps(またはそれ以上)の広帯域幅に加え、コンバージドイーサネット上でのRDMA(Remote Direct Memory Access)を可能にするGigE Vision 3.0は、イーサネット機器の性能を最大限に引き出すインターフェース規格として、産業用画像処理と産業用オートメーションの両方においてメリットがあります。
RoCEv2による画像データ転送の効率化
GigE Vision 3.0の二つ目のイノベーションは、パケットロスとレイテンシーの低減にあります。RoCEv2による画像データ転送では、メモリーに直接アクセスするため、CPUによるバッファリングやコピーを行うことなく、画像データのパケットを構築・送信し、送信先のメモリーに書き込むことができます。
さらに、使用するカメラについても、必要なバッファメモリー容量が大幅に減少するというメリットがあります。
CPUをバイパスすることで、2つの効果が得られます。まず、エラーの原因が排除され、次に、システムリソースが他のタスクに利用可能になります。全体として、GigE Vision 3.0はシステム全体のコスト削減につながる可能性があります。

もともと非常に要求の厳しい環境向けに開発されたRoCEv2プロトコルは、GigE Visionのすべての利点を同時に強化する増幅器です。つまり、GigE 3.0バージョンは、マシンビジョン市場にとって長期的に非常に重要なものとなるでしょう。

GigE Vision 3.0の主な特長
CPU処理なし:ほかの作業にリソースを回せるため、システム全体の性能が向上
マルチカメラシステム:本来の性能・信頼性を維持したまま、複数のカメラを運用可能
高精度なデータ転送:RoCEv2の一貫した通信により、画像処理の各種不具合を低減
広帯域幅&高拡張性:リアルタイムな画像処理が求められる用途に最適
低レイテンシー:ロボット用途やオートメーション用途におけるシステムの反応速度を向上
優れた互換性・相互運用性:従来のGigE Vision制御プロトコルを採用することで、既存のソフトウェアへの変更を最小限に抑えながら、シームレスな移行が可能
今後の展望 - 迅速な実用化への期待

GigE Vision 3.0は、A3によって規格の策定が進められており、2025年内のリリースが見込まれています。
A3傘下の組織として技術開発を担当しているGigE Vision専門委員会には、Baslerでシニアプロダクトアーキテクトが務めるMichael Schmidtも参加しています。また、GigE Vision 3.0は新規格ではなく、既存のGigE Vision 2.2の後継規格に位置づけられるため、迅速な実用化が期待されています。