GigE Vision 2.0:マルチカメラシステムに最適なインターフェース規格
複数のカメラを正確に同期・制御しながら、リアルタイムな画像処理を実現するGigE Vision 2.0は、測定、モーションキャプチャー、画像解析などへの活用が期待される革新的なインターフェース規格です。
GigE Vision 2.0の機能
GigE Vision 2.0には、PTP(Precision Time Protocol)と動作コマンドの2種類の機能が搭載されており、マルチカメラシステムにおける正確な同期とリアルタイムな処理が可能です。
PTP(Precision Time Protocol)
GigE Vision 2.0の代表的な機能の一つであるIEEE 1588規格のPTP(Precision Time Protocol)は、ネットワーク上にある機器を管理することで、高精度な時刻同期を実現する通信プロトコルです。マルチカメラシステムにおいては、PTPに対応した複数の産業用カメラのうち、最も時刻が正確なカメラをマスタークロック、残りのカメラをスレーブクロックとします。
マスタークロック:UTC(世界協定時)に準じた時刻を取得するため、GPSサーバーを使用して制御することが推奨されます。
スレーブクロック:マスタークロックから時刻情報を受け取ることで、ナノ秒単位の精度でカメラを同期します。
PTPを使用すれば、すべてのカメラの時刻設定を統一し、同じタイミングで撮影を行うことができます。
動作コマンド
従来より、GigE Vision対応カメラは、動作コマンドの受信と実行ができるように設計されています。
マルチカメラシステムのトリガー撮影などに使用される動作コマンドは、イーサネットパケット形式により、ネットワーク上のカメラにコマンドを送信します。しかし、従来のGigE Visionの場合、複数のカメラを同期するために各カメラのデジタルI/Oポートをケーブルで接続する必要がありました。
一方、GigE Vision 2.0では、PTPのタイムスタンプを介して指定時刻にコマンドを実行するスケジュール動作コマンド機能が追加されているため、カメラ同士を物理的に接続しなくても、正確な同期が可能になっています。
GigE Vision 2.0の活用事例
半導体検査、交通・輸送、スポーツ・動作分析をはじめ、GigE Vision 2.0は、複数のカメラを同期・制御する高度な撮影に最適です。
半導体検査
半導体検査では、複数のカメラをベルトコンベヤーの上部に設置し、同じ速度で移動する半導体を撮影します。その際、それぞれの画像データを一つに統合するため、各カメラの撮影のタイミングを揃える必要がありますが、GigE Vision 2.0のスケジュール動作コマンドを使用すれば、マイクロ単位の正確な同期を行うことができます。
交通・輸送
交通・輸送用途では、高度なマルチカメラシステムが使用されています。例えば、信号無視を検知する場合は、以下のように2台のカメラによる撮影が必要になります。
カメラ1:赤信号時に停止線を超過した車両を撮影
カメラ2:道路の反対側から停止線の超過有無を検証
撮影画像には正確なタイムスタンプが付与されるため、関係機関による違反の確認や取り締まりにも役立ちます。
スポーツ・動作分析
現在の多くの競技場では、複数のカメラを同期しながら、異なる角度から試合を撮影しています。各カメラのデータを統合して生成された360度視点の3D画像は、観客の臨場感を高めるだけでなく、コーチによる試合分析にも役立っています。
GigE 2.0による正確な同期&リアルタイムな処理
PTP、動作コマンドなどの便利機能を搭載したGigE Vision 2.0は、ソフトウェアを介して複数のカメラを同期するため、ハードウェアトリガーを行う必要がありません。さらに、これにPoE(Power over Ethernet)も組み合わせれば、ケーブ1本で電源供給・撮影制御・画像取得・機器同期が可能になるため、ビジョンシステムの構築にかかるコストと労力を効果的に削減できます。
GigE対応製品
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