活用事例

熱ノイズ&ホットピクセル対策:長時間露光向けビジョンソリューション

ディスプレイのドット落ちや半導体の微弱信号の検出をはじめ、微細な欠陥検知に欠かせない長時間露光撮影。以下では、その際に発生する熱ノイズやホットピクセルを防止するソリューションについて解説します。

熱ノイズ&ホットピクセル対策:長時間露光向けビジョンソリューション
一般的な露光とBaslerのソリューションの比較(露光時間:10秒、ゲイン:27dB、絞り値:F4、撮影環境:暗箱)

長時間露光による微細な欠陥検知

ディスプレイ検査における表示ムラ・色ムラの検出、半導体検査における信号とノイズの識別をはじめ、微細な欠陥検知が求められる撮影用途では、速度重視の短時間露光の代わりに、感度重視の長時間露光が行われる場合があります。

ディスプレイ検査・半導体検査における長時間露光撮影の主な課題

長時間露光撮影では、熱ノイズ、ホットピクセル、暗電流、被写体ブレをはじめ、画質や検査精度に影響するさまざまな不具合が発生します。主な課題は、以下の通りです。

  1. 熱ノイズやホットピクセルの発生

    長時間露光によりセンサーに熱が蓄積し、熱ノイズやホットピクセルが発生すると、欠陥の誤検知や再検査によるコスト増大につながります。

  2. 画像細部の情報のロス

    機械の動作、周囲の振動、熱膨張などにより被写体ブレが発生すると、半導体の高倍率撮影やディスプレイの高解像度撮影において、画像細部の情報が失われてしまいます。

  3. 受光量の増加による副作用

    長時間露光により受光量が増加すると、SN比(信号対ノイズ比)が向上する一方で、ホットピクセルや暗電流も増大し、画像細部の重大な欠陥を見逃してしまうおそれがあります。

  4. コストパフォーマンスの低下

    冷却素子を内蔵した高画素センサーは、ノイズを最小限に抑えられるものの、構造が複雑で価格も高いため、コスト重視の撮影用途には適していません。

長時間露光撮影の主な課題
蛍光体の顕微鏡画像の比較(被写体サイズ:8.5µm、露光時間:1秒、ゲイン:24dB、ビニング値:2×2、倍率:40倍):画像左(オリジナル画像)、画像右(AI処理によりテンポラルノイズを低減)

熱ノイズ&ホットピクセル対策

検査効率に影響を与えることなく、熱ノイズとホットピクセルを防止するには、センサー、冷却機構、画像処理手法の3点を考慮したうえで、以下のような対策を行う必要があります。

対策

仕組み

メリット

デメリット

ホットピクセル補正

複数のフレームのホットピクセルを補正

ホットピクセルを直接補正して信号品質を維持

CPU負荷の増大により検査速度が低下

ダーク補正

ダークフレームの減算処理により熱ノイズを除去

固定ノイズの補正に最適

2種類のフレームが必要、ランダムノイズに対応できない

ピクセルマッピング&マスクキング

周囲のピクセル値に基づいてホットピクセルを補正

固定パターンのホットピクセルの補正に最適

他のノイズが増大するおそれあり

テンポラルノイズ除去(フレームスタッキング)

複数のフレームを均一化してランダムノイズを低減

SN比が向上、固定ノイズも補正可能

動体撮影に適していない、環境変化に弱い

カメラ筐体のカスタマイズ

センサー温度を抑制して熱ノイズとホットピクセルを低減

ホットピクセルを根本から防止することで画質が向上

すべてのノイズに対応できない、露光時間が長くなるとノイズが増大

結論:ハイブリッド型ソリューション

半導体検査、ディスプレイ検査などの複雑な撮影環境において、一つの対策のみで最適な画質を実現することはできません。そのため、Baslerでは、ハードウェアとソフトウェアの両方による対策を組み合わせたハイブリッド型ソリューションをご提供しています。

長時間露光撮影向けに設計されたカスタム製カメラ筐体
長時間露光撮影による中心温度の上昇を防止するカスタム製カメラ筐体(外形寸法:60mm×60mm×60mm)
  • ハードウェアの最適化:カメラ筐体のカスタマイズにより、センサー温度を抑制し、熱ノイズとホットピクセルを大幅に低減。カメラの中心温度を45°C以下にすることで、ホットピクセルを最小限に抑えます。

  • ソフトウェアによる後処理:後処理アルゴリズム(ホットピクセル補正、ダーク補正、ピクセルマッピングなど)を使用し、長時間露光により発生したノイズを低減します。

  • FPGAによるリアルタイムなノイズ除去:露光設定を動的に調整し、センサーレベルのノイズ除去を行うことで、処理による遅延を発生させることなく、熱ノイズやホットピクセルをリアルタイムに低減します。

長時間露光撮影における画質の最大化

Baslerでは、半導体検査・ディスプレイ検査を対象に、長時間露光撮影のさまざまな課題に対応したビジョンソリューションをご提供しています。

  • ホットピクセルの低減:独自の動的補正アルゴリズムを採用することで、露光時間8秒、ゲイン27dBにおけるホットピクセルの発生を2ppm(100万ピクセル当たり2個)以下に低減

  • リアルタイム&CPU負荷ゼロ:カメラのFPGA上で画像処理アルゴリズムを実行することで、ホストCPUに負荷をかけることなく、高速・高解像度撮影を実現

  • 露光設定の最適化:ディスプレイの動的検査、半導体の精密検査をはじめ、検査用途に応じて露光設定を最適化

  • コンパクトかつ高性能な冷却機構:オプションの冷却機構によりホットピクセルを根本から防止することで、後処理にかかる労力を抑えながら、画質を向上

ハイブリッド型ソリューション

ハイブリッドアプローチを採用したBaslerの長時間露光向けビジョンソリューションは、優れた画質・速度と抜群のコストパフォーマンスにより、さまざまなシーンにおける検査精度の向上に貢献します。

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