がん手術における撮影画質の向上
ハードウェアプログラミングが不要なFPGAアルゴリズムを利用し、手術工程をリアルタイムに可視化
- 顧客
- Quest Medical Imaging BV
- 所在地
- オランダ
- 日付
- 2018年
がん手術の撮影にマルチスペクトルカメラを利用する病院が増えるなか、Quest Medical Imaging社では、独自開発のマルチスペクトルカメラやプログラマブルフレームグラバー、専用ソフトウェアなどから構成される画像処理システム「Quest Spectrum」を提供しています。
システムの仕組み
今回のシステムでは、手術前にがんの種類に合った蛍光マーカーを注入し、近赤外光を照射した時に病変部が発光するようにした後、マルチスペクトルカメラ(データ転送速度:255MB/秒、最大フレームレート:60fps、画質:HD)でRGB形式のカラー画像1枚と近赤外領域の蛍光画像2枚を撮影し、そのうちのカラー画像1枚と蛍光画像1枚を合成する仕組みになっています。
こうすることで、腫瘍とその周りの組織の画像がモニターに表示されるため、開腹手術または低侵襲手術にかかわらず、がん細胞と正常な組織を正確に識別できます。
しかし、従来のフレームグラバーを使用する場合、ホスト側のCPU上で画像の取得から前処理、後処理に至るまでのすべての工程を行うため、大容量の高解像度画像を直接転送しなければならず、システム全体の速度が落ちてしまうという問題がありました。
フレームグラバーによる前処理と2種類の表示モードに対応
CPU負荷を軽減し、撮影速度を向上させるため、Quest Medical Imaging社では、システムのフレームグラバーをCameraLink対応の microEnable 5 marathon VCLに変更することにしました。このフレームグラバーにはFPGAが搭載されており、マルチスペクトルカメラで撮影した画像をピクセルごとに並行処理したり、複数の画像を合成したりすることができます。
がん細胞をリアルタイムに可視化
新しいシステムでは、リアルタイムな手術の撮影や、蛍光染色によるがん細胞と正常な組織の正確な識別、さらにはリンパ節や細かな血管など肉眼で見えない部位の可視化も可能になっています。
選べる2種類の表示モード
今回採用されたフレームグラバーは機能面でも充実しており、カラー画像と蛍光画像を並べて表示するモードと、、両方の合成画像を表示するモードの2種類が選べます。そのため、手術中に画像を切り替える必要がなく、医師が組織の識別や手術器具の操作に集中できるようになっています。
プログラマブルフレームグラバーの専用ソフトウェア
Baslerのプログラマブルフレームグラバーが採用されたもう一つの理由として、簡単便利なFPGA画像処理開発環境VisualAppletsが挙げられます。フローチャート形式の直感的な操作画面を採用したこのソフトウェアがあれば、多大な時間・コスト・専門知識が必要なVHDLを使用しなくても、画像の前処理・出力アルゴリズムやハードウェアアプレットの開発・シミュレーション・実装をスムーズに行うことができます。
画像処理システムの特長
新システムへの移行はわずか2か月で完了し、メーカーによる大きなサポートも必要ありませんでした。このほか、ハードウェア、ソフトウェアともにさまざまな蛍光マーカーに対応しているため、色調整などの簡単な操作で幅広いがんを観察できることも今回のシステムの大きな特長です。
メリット
画質を大幅に改善しながら、手術の精度を向上
画像を前処理するため、ホスト側に転送する前にデータ容量を削減可能
帯域幅やストレージ容量の問題を解決
FPGA処理によりレイテンシーを抑えた高速データ転送を実現
使用製品
ご紹介したソリューションの導入には、以下の製品が最適です。